理学療法士として働くサメ

理学療法士として勉強したことをまとめていきたいと思っています!

心不全とチェーンストークス呼吸...見つけた時にはどんなことを考えたらいい?

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心不全 #チェーンストークス呼吸 #理学療法 #リハビリ

 

お疲れ様です!フカヒレです!

今日は普段の疑問ですね。

休み明けみたら心不全悪化してる😨

なんてことありますよね...

訪室したらチェーンストークス呼吸だし。

 

でも細かい機序を学生や後輩に説明できないなってことで葛西らの総説論文1)を参考・引用してまとめてみます。

 

チェーンストークス呼吸とは?

教科書などを見ると,無呼吸期を伴う周期性呼吸で,数秒~数十秒の無呼吸→深く早い呼吸→浅くゆっくりした呼吸が繰り返される...と書いてますよね。

 

止まったなって思ったら,急にはーはーして,また止まっていくので比較的わかりやすい呼吸ですね。

 

心不全とチェーンストークス呼吸

次は心不全との関連です。

心不全では睡眠時無呼吸症候群とは異なるパターンの一回換気量の漸増漸減する過呼吸と中枢性無呼吸を繰り返し中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration with central sleep apneaCSR-CSA)といわれています。

Javaheriらは左室駆出率(LVEF)45%未満の心不全患者の40%に合併する2)と報告しています。他の研究でも合併率は30~50%3)と報告しており,比較的高い頻度でみられるみたいですね。

また,CSR-CSAの合併のある患者とない患者を比べると,死亡率に有意な差がある4)ことが報告されています。

よく言われる閉塞性睡眠時無呼吸症との大きな違いは無呼吸時に中枢の呼吸刺激自体がないため胸壁,腹壁の運動が欠如し,気道閉塞がないのでいびきも著明ではないのが特徴みたいですね

 

CSR-CSAの機序

一つの機序によるものではなく,いくつかの原因が合わさって起こるのでは?とされているみたいです。

詳細は明らかになっていないところもあり,あくまでも説とした図は以下の通りです。

 

流れ的にはこんな感じです。

CSR-CSAを合併する心不全患者では,合併していない群と比べるとPaCO2が低値である5)との報告があります。

PaCO2が低下するということは,過換気などによりO2が過剰になり,CO2が排出されている状態のため,呼吸が抑制されますね。PaCO2がもともと低めということは,そもそも無呼吸になりやすい状態。

そのため,CSR-CSAを合併している患者さんでは合併していない患者さんよりも無呼吸閾値を下回りやすく,それにより換気が抑制され無呼吸が出現します。

 

また,心不全患者では低心拍出量により肺から化学受容体への動脈血ガス分圧の変化を伝達するのに時間がかかるため,化学受容体でPaCO2の低下を感知したときには,すでにPaCO2は無呼吸閾値を下回っていることになります。

 

睡眠中の意識状態の変化でも変わってくるため,様々な要因が絡み合ってCSR-CSAとなっていると考えられているみたいですね。

 

心機能への影響は?

心不全患者に合併するCSR-CSAは中枢性無呼吸のイベントの回数と比較して,ほかの悪化因子と独立した死亡率,心臓移植率の増加因子であることも報告されている4)みたいです。

また,CSR-CSAを合併する心不全患者では,交感神経活動性の亢進を伴い6),実際に交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質である中ノルエピネフリン濃度が覚醒回数や無呼吸に伴う低酸素血症の程度に比例するという報告もされている7)。このような長期間持続するカテコラミン過剰状態,反復する低酸素血症,HR,BPの上昇などは心機能,心収縮力の低下を招くことや不整脈の惹起8)に繋がり,死亡率などの予後の悪化につながる可能性があるとのことです。

 

まとめ

左室駆出率(LVEF)45%未満の心不全患者の40%に合併すると言われており,臨床でも比較的見かけることが多いCSR-CEA

様々な要因が機序として考えられるため,胸水の量や検査データなどから全身状態を考える必要がありますね。

予後の悪化にも繋がる可能性があり,見かけた際にはチームでの情報共有や適切な治療,NPPVの導入を提案できると患者さんの状態改善に繋がると思います。

 

ではまた👋

 

【参考・引用文献】

1)葛西隆敏,成井浩司:慢性心不全に伴う中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸,日本呼吸管理学会誌 第12巻 第3号,412~418,2003.

 

2)Javaheri.S.et al:Sleep apnea in 81 ambulatory male patients with stable heart failure.Types and their prevalences,consequences,and presentation,Circulation,97:2154~2159.1998.

 

3)Sin.D.D.,et al.:Risk factors for central and obstructive sleep apnea in 450 men and women with congestive heart failure,Am J Respir Crit Care Med,160:1101~1106,1999.

 

4)Hanly.P.J.,et al.:Increased mortality associated with Cheyne-Stkes respiration in patients with congestive heart failure,Am J Respir Crit Care Met,153:272~276,1996.

 

5)Naughton,M.,et al.:Role of Hyperventilation in the patho-genesis of central sleep apnea in patients with congestive hear hailure,Am Rev Respir Dis,148:330~338,1993.

 

6)van de Borne,P.,et al:Effect of Cheyne-Stokes respiration on muscle sympathetic nerve activity in severe congestive heart failure secondary to ischemic or idiopathic dilated car-diomyopathy,Am J cardiol,81:432~436,1998

 

7)Naughton,M.t.,et al:Effects of nasal CPAP on sympathertic activity in patients with heart failure and centrl sleep apnea,Am J Respir Crit Care Med,1995;152:473~479.

 

8)Javaheri,S.,et al:Association of low PaCO2 with central sleep apnea and ventricular arrhythmias in ambulatory patients with stable heart failure,Ann Intern Med,128:204~207,1998.