患者さんがご飯食べない...どうしてなのか?
#食欲不振 #理学療法 #リハビリ #医療
お疲れ様です!フカヒレです!
今日は食欲不振、いわゆるご飯が食べられない原因についてです。
入院した患者さんがよく食欲不振になることありませんか?
僕らも夏バテや熱が出た時は「今日は食べたくないな」って感じるときありますよね。
近年リハ栄養などリハビリをする時の栄養状態の大切さが言われていますが、まずは原因がわからないことには対処も難しいと思うので勉強していきましょう。
↓今回は若林先生の著書を参考にしてます!患者さんの栄養状態を改善したいなら絶対に見ておくべきです。
「攻めの栄養療法」実践マニュアル うまくいく栄養改善と生活機能改善 [ 若林秀隆 ] 価格:3,740円 |
食欲不振の原因
そもそもなぜ食欲不振になるのか?
若林らの著書「攻めの栄養療法」実践マニュアル1)によると,
原因 |
具体的内容 |
疾患によるもの |
がん,心不全,慢性腎臓病,脳血管疾患,肝硬変,呼吸器疾患,慢性胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃食道逆流,甲状腺機能低下症,電解質異常,口腔内疾患,うつ病,認知症,神経性食思不振症 |
(疾患に合併する症状) 悪液質や呼吸苦などに起因する倦怠感,疼痛,意欲低下など精神的な落ち込み,めまい,嘔気・嘔吐症状 |
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疾患によらないもの |
加齢,ストレス,生活リズム(活動量不足,睡眠不足),発熱,便秘,味付け,嗜好,食事内容,食形態,威嚇の低下,咀嚼嚥下能力の低下,義歯の不適合 |
疾患と間接的に関連するもの |
尿失禁,便失禁,安静度指示,便秘,腹部膨満感 |
薬剤性 |
たくさんありますね...
疾患によるものに関しては,臓器の機能低下や慢性炎症などによる全身性の消耗・栄養利用代謝障害が生じることが関係してそうですね。
文献的には食欲や摂食行動を制御する神経機構は明らかになりつつあるが 2),炎症に伴う食欲不振の神経メカニズムには不明な点が多いとのことです。
でもそれだけでも倦怠感を感じるでしょうし。さらに疾患によっては呼吸苦や疼痛で食事を摂取する余裕が出ませんよね...
難しいのはせん妄や認知機能の低下した患者さんでしょうか...
注意がそれたり,食べ物としての認識が出来なかったり,昼夜逆転で食事の時間眠ってしまったり。日々の観察や機能評価を行い,適切な対応をしないことには,なかなか改善が難しい印象です。
疾患によらないものに関しては,急な入院や疾患による症状や不安ですごくストレスが溜まりますよね。そんな中で医療者側からのいろいろな話がありますし。元気な時は食欲出ますが,嫌なことがあった時は食欲出ないですよね。
また,安静度によって活動量が落ちればお腹も空かないですし,動かないことで夜眠られず寝不足になれば,食事より寝たいってなりますし。
病院のご飯も塩分や糖分控えてね~ってなるとおいしくないんですよ(笑)
おいしくないもの食べるの大変ですよね。それが毎日来るとなると嫌にもなります。
疾患と間接的に関連するものに関しては,下痢や便秘があると自分で食事量調整しますよね。下痢の時にたくさん食べる人は少ないと思いますし,便秘だと苦しくなりますよね。
骨折後に手術まで時間がある場合など,安静度によってはベッドから動けないのでどうしてもおむつ対応になることもあります。したら排便したくないからなるべく食べないようにしますよね。
薬剤性に関しては,あまり詳しくないですが副作用として食欲が低下する可能性があるもみたいです。
食欲不振への対応
・苦痛や倦怠感などによる症状が原因の場合
リハビリとして関われることは限られているので,まずは主治医,看護師,薬剤師,栄養士など多職種で相談し,身体的な苦痛や負担を取り除くことが第一だと思います。
例えば,疼痛が原因ならば薬剤調整,体位調整,食形態や食事内容の変更等を患者さんも交えて話し合うことが効果的だと思います。
また,易疲労性であったり倦怠感が強い場合には,リハビリの介入時間や負荷量などを患者さんと相談しましょう。リハビリ⇒食事が続くと疲れが残ってしまいます。
・疾患によらないもの(ストレスなど)が原因の場合
第一にすることは患者さんと話をして悩みや食べられない原因を探ることです。話を聞かないことには相手も話を聞いてくれませんからね。傾聴した上で,原因を解決できるような介入を行い,その後に食事の必要性を説明すると理解も得られやすいと思います。
嗜好や元々の食生活の聴取をすることで,入院中の食事内容の変更や栄養補助食品の提供,退院後の栄養指導にも繋げることができますので,時間のある時に聴取しましょう。自分は初期評価時に必ず細かく聴取し,カルテに記載するようにしています。
【朝:パン 昼:パンor麺類 夜:ご飯】みたいな人もいますよね。でも入院中のご飯は基本米飯です。患者さんは変更できることを知らないので我慢して食べられますが,主食を変更するだけで食が進むことも多いです。
・認知機能の低下が原因の場合
認知機能の低下も様々だと思うので,対応は個別で変わると思います。注意がそれる場合には,なるべく注意のそれるものを減らすためにカーテンで仕切り,テレビを消し,食べ物に意識をむくようにしましょう。
場合によっては集団何人かで集まって会話をしながら食事をする方が進む場合もあるので,試しながら一番いい方法を模索していくといいと思います。
時間がかかる場合もありますが,気分が乗らないときは時間をずらしたり,本人のペースに合わせて声かけをしながら適宜促していくことも重要なことだと思います。
・その他の原因の場合
薬剤性の場合の判断は難しいかもしれませんが,新しい薬剤が始まったタイミングなどに食欲不振が出現した際には,他の要因を削除して主治医や薬剤師,看護師に相談してみるといいと思います。
注意点としては,一度にいろいろなことをまとめて変更すると何が良かったのかわからないので,一つ一つ評価してみるといいと思います。
まとめ
こんな感じで,患者さんにとっては入院するだけで食事が食べれなく理由がたくさんあります。このこと考えずに闇雲に「ご飯食べないとだめだよ!」などは言わないようにしましょう。必ず食べられない理由があるのですから。
現在の全身状態を考え,患者さんと話しましょう。「あれなら食べれそう」,「痛くて食べれない」など理由を聞くことで,対応策も変わってきます。
リハビリって他の職種よりも患者さんと話す時間が多いと思います。なので,聴取したことをチームに還元していくことはしやすいんじゃないかなって感じます。患者さんが悩みを話しやすいセラピストになれるようにコミュ力を磨きましょう(笑)
【参考・引用文献】
1)若林秀隆,前田圭介,西岡心大:「攻めの栄養療法」実践マニュアル-うまくいく栄養改善と生活機能改善-,中外医学社,2020,p82-83.
2) Zeltser LM:Feeding circuit development and early-life influences on future feeding behaviour.Nat Rev Neurosci. 2018;19:302-316.