リンパ浮腫とスキンケア リンパ浮腫研修 E-LEARN(厚生労働省後援)の復習...④
#リンパ浮腫 #リンパ浮腫研修 E-LEARN #セルフケア
#理学療法 #リハビリ
お疲れ様です!フカヒレです!
今日はリンパ浮腫でとても大切になるスキンケアについてです。
なんでセルフケアが必要か?
リンパ浮腫は患者さんが生涯付き合っていくことが多く,予防的な観点や発症後の管理として自分自身でケアをしていく時間がとても長くなります。
そのため,セルフケアの知識や手技の獲得を目指し,自信をつけていくことが重要になると思います。
スキンケアとは
皮膚の生理機能を良好に維持する,あるいは向上させるために行うケアの総称のことをいいます。
・皮膚からの刺激物,異物,感染源などを取り除く洗浄
・皮膚と刺激物,異物,感染源などを遮断したり,皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりする被膜
・角質層の水分を保持する保湿
・皮膚からの浸軟を防ぐ水分の除去
原則としては...①皮膚の洗浄・保清,②皮膚の保湿,③皮膚の保護となっています。
①皮膚の洗浄・保清
1.水または微温湯で皮膚の汚れを流す
2.よく泡立てた洗浄剤で汚れを包み込むように洗浄する(泡立てできるものを使用も◎)
・余分な摩擦は加えない
・皮膚をごしごしこすらない
・ナイロンタオルやブラシ,たわしなどは皮膚の角質を傷つけるため使用せず,泡を手
で優しく広げいきわたらせる
3.洗浄剤が残らないよう十分に洗い流し,タオルで水分をふき取るときはこすらず抑えるようにする
※洗浄剤について
皮膚表面は弱酸性になっています(pH5.5~7.0)
汚れを落とす効果としては 弱酸性の洗浄剤<アルカリ性の石鹸(pH10前後)
乾燥傾向のリンパ浮腫の皮膚には刺激の少ない弱酸性の洗浄剤が推奨される
肌に合うものを選択することが大切
②皮膚の保湿
・入浴後や手洗い後など皮脂を洗浄し落とした時は,時間をおかずに保湿剤を塗布する。
(角質内に入った水分を逃さない効果が期待される)
・全体に薄く,伸ばすように優しく塗る。こすらない。
ワセリンなど保湿剤が固い場合には体温で温めるなどしてから塗る。
・適量を塗る。(ティッシュペーパーが付着する程度に塗布する)
・皮膚の乾燥は掻痒感を誘発するため,乾燥時には保湿剤を塗布する。
※皮膚の保湿のしくみについて
・角質細胞間脂質
セラミドなどで構成され,角質細胞の隙間を埋め,水分の蒸散を防ぐ。
・天然保湿因子
アミノ酸,乳酸,尿素,ミネラルなどからなり,角質細胞内に水分を吸収・保持することにより潤いにある皮膚を保つ働きをする。
・皮脂
皮脂腺から分泌され,皮膚の常在菌によって分解されることで脂肪酸を生じ,皮膚表面で弱酸性となり,バリア機能を果たす。
③皮膚の保護
皮膚障害をもたらす物理的・化学的要因から遮断することをいいます。
・テープ類や貼付剤の使用方法に注意する
・紫外線の刺激を避けるため日焼け予防を勧める
・物理的刺激が懸念される場合(ペット,ガーデニングなど)は衣類による保護を検討する
・脱毛による刺激に注意する
・掻把傷予防のため爪の手入れを行う
・圧迫のための包帯や着衣で皮膚を傷つけないよう着脱や装着中の確認の仕方について説明する
上記に気を付けることが皮膚の保護につながります。
まとめ
スキンケアは皮膚の洗浄・保清・保湿・保護が大切。
知識をつけることで,より適切なケアが可能になると思います。
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がん医療のコミュニケーションはEVEを意識!
#がん医療 #コミュニケーション #EVE
お疲れ様です!フカヒレです!
いろいろあり(モンハンしたり...スプラ3したり...パソコン壊れたり...)しばらくぶりの勉強です。
最近がんの患者さんを担当することが多いのですが,みなさん辛いこと,悩んでいることをたくさん話していただけます。涙を流されることもあり,自分の対応が正しいのかいつも悩んでいます。
なので今回は,コミュニケーションについて勉強していきたいと思います。
実際に経験したがん患者さんの声
今までに自分がお話を聞いてきた中にはこんなものがありました。
・がんって聞いたけど,手術したら治るの?再発するの?
・抗がん剤をしたら指がしびれて家のことができなくなった...
・みんな敵に感じて誰を信じていいのかわからない
・分かったつもりでいても受け入れられてなかったんだな
・もうなにもしないからなにもしないでくれ
など
まだまだありますが一部を上げるとこんな感じです。
一人で悩まれる方がいたり,毎日不安をお話される方もいます。
なんて返答したらいいか悩むこともあります。
ではEVEとは
E:Exploring 感情と感情の背景を知る
V:Validating 自然な感情であることを伝える
E:Empathizing 共感していることを伝える
【Exploring】
・患者さんが抱えている不快な感情を知る
「先生とどんなお話をされましたか?話を聞いてどのような気持ちになりましたか?」
「抗がん剤を開始するにあたり不安なことはありますか?」
「体の不調はありますか?」
など,患者さんが抱えている想いを聞き・知ることがまずは大切だと思います。
・聴取した不快な感情の背景を知る
「先生の話で特に気になったことはどのような事でした?聞きそびれたことはなかったですか?」
「ご家族や友人に抗がん剤を使用された方がいたんですか?」
「体の不調はいつ頃からですか?なにかきっかけはありましたか?」
など,聴取した想いの原因を探ってみると対処できるポイントがあるかもしれません。また,患者さんは不安なことを傾聴してもらえるだけでも気持ちが楽になる人もいます。
【Validating】
・患者さんが抱えている不快な感情は,その人自身が弱かったり,変わっているのではなく同じように感じている人がいる自然な事であることを伝える
「前に担当した方も同じように話されてましたよ」
「抗がん剤を使ったことがないんですから,不安なことがあるのはおかしいことじゃないですよ」
など,似たような意見があると分かると少し安心するのかなと思います。孤独ではないことも精神的な支えになると思います。
【Empathizing】
・患者さんが抱えている不快な感情とその背景を結び付けて表現する
「先生から今後再発する可能性があると聞いて不安になったんですね」
「抗がん剤の有害事象の程度は人それぞれ違うと言われても身近な人の話を聞くと不安になりますよね」
「抗がん剤を使ってからしびれがでてきていつまで続くのか,家のことができるのか不安なんですね」
など聴取した内容をまとめ,自分の言葉で共感を伝えることで相手はちゃんと聞いてくれているんだと感じてくれます。返答に困ったときには,患者さんの言葉をそのまま繰り返す(~と思ったんですね...)こともいいのかなと思います。
・言葉で伝えることが難しい時には非言語的に表現する
アイコンタクト,頷き,体をさするなど
時には言語的に表現しにくい時もあると思うので,上記のような方法で表現することも相手に気持ちが伝わると思います。
・医療者の個人的感情を表現することではない
不快な感情を感じているのは患者さんであり,医療者側には想像できないほど悩まれ,苦悩されています。そのため,基本は自分の個人的な感情を伝えるのではなく,相手の発言に共感を伝えるのがいいと思います。
以上がEVEです。
まとめ
医療の提供には信頼関係の構築は切っても切れないものです。
リハが進まない原因にも患者さんなりの悩みがあると思うので,相手の気持ちを傾聴・理解・共感していくことが大切になります。
EVEを少し意識してみてください!
酸素療法について!低流量(ローフロー)システムと高流量(ハイフロー)システムの違いは??
#酸素療法 #低流量システム #高流量システム #医療 #理学療法 #リハビリ
お疲れ様です!フカヒレです!
今回は酸素療法についてです。
低流量システムと高流量システムの違いについて理解を深めてもらえるといいなと思います。
今回はこの教科書も参考にまとめています。わかりやすい教科書なので,うちの病院でも皆さんお世話になっています!
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酸素投与の方法
吸入酸素濃度に応じて方法と流量を選択します。
低流量システムと高流量システムの2種類があります!
・低流量(ローフロー)システム
患者さんへの酸素供給が酸素供給装置より部分的に行われるもののこと。
簡単に言うと...
供給される酸素の総流量が患者さんが一回で換気する量(一回換気量)より少なく,足りない分は装置以外の外気から取り込むもののことをいいます。
計算してみるとイメージしやすいです...
体重×10mLで一回換気量を求めることができますが,成人ではだいたい500mL程度といわれています。
息を吸うのにかかる時間はだいたい1秒程度です。1分あたりでは,
500mL×60秒=30000mL/分=30L/分となります。
壁から流れる酸素は多くても12~15L/分(分時換気量)程度...
カチカチダイヤルを回したりして12Lの酸素を流しても
30L/min-12L/min=18L/min
この18L/minが外気ということになります。
これが酸素供給が酸素供給装置により部分的に行われているということです。
【種類】
・鼻カヌラ
・リザーバー付き鼻カヌラ(オキシマイザー)
・簡易酸素マスク
・開放型酸素マスク(オープンフェースマスク)
・リザーバー付き酸素マスク など
【メリット】
・鼻カヌラは圧迫感や閉塞感が少なく,会話や食事に適している。
・患者さんが比較的自分自身で扱いやすい。
【デメリット】
・酸素吸入濃度が患者さんの換気量,呼吸パターン,呼吸数に影響を受ける。
⇒酸素をためるところをリザーバーといいますが,鼻腔は人間に備わっている解剖学的リザーバーといわれています。呼吸が速くなり,浅くなると鼻腔(解剖学的リザーバー)にたまる暇がなくなり,FIO2が低下してしまいます。そうすると余計苦しくなり,さらに頻呼吸が助長され低酸素になってしまうということもあります。
逆にゆっくりになるとFIO2が上昇し,呼吸は抑制されます。呼吸が抑制されると,呼吸はさらにゆっくりとなりCO2が貯留しやすくなり,CO2ナルコーシスになってしまうこともあります。極端かもしれませんがこんなイメージを持っておくと,低流量システムがなぜ患者さんの呼吸様式の影響を受けるのかイメージできると思います。
・高流量(ハイフロー)システム
患者さんへの酸素供給が酸素供給装置よりすべて行われるもののこと。
詳しく説明すると...
低流量システムと違い,患者さんが一回で換気する量(一回換気量)よりも多い,30L/分(分時換気量)以上の高流量で酸素と空気の混合ガスを吸入するシステムのことです。低流量システムと違い,患者さんの呼吸状態の影響を受けずに吸入酸素濃度を一定に維持することができます。
【種類】
・ベンチュリ―マスク
・インスピロンネブライザー
・アクアサームネブライザーなど
【メリット】
・呼吸状態の影響を受けずに吸入酸素濃度を一定に保つことができる。
・ベンチュリ―マスクでは,大きな気流量で24~40%の一定濃度の酸素を供給でき,患者さんの呼吸状態に依存せず,CO2の再呼吸もない。
・抜管後の気道乾燥を防ぐために,加温加湿した空気を送ることもできる。
【デメリット】
・音がうるさいものもある。
・器具がごちゃごちゃしているので,うっとうしく感じる方もいる。
・在宅でのハイフローセラピーなどもあるが,高齢の方には低流量システムよりも扱いにくいイメージ。
あんまりデメリットが浮かびません...
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まとめ
低流量システムと高流量システムの違いは酸素供給を患者さんの一回換気量を基準に部分的orすべて行うかで分かれる。
共にメリット,デメリットがあるので,イメージを持ちながら使い分けていただけるといいかなと思います。
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水分足りてる??IN/OUTバランスについて
#医療 #IN/OUTバランス #理学療法 #リハビリ
お疲れ様です!フカヒレです!
今日はIN/OUTバランスについてです。
簡単にいうと,体内に入れる水分量と排出される水分量のバランスです。
医療の現場では,計算している場合も多いと思います。
これから暑くなると脱水症になる方も増えてくるので,知っておいて損はないと思います。
リハビリをやる際にもIN/OUTバランスの把握は大切になるので,計算してみましょう。
IN/OUTバランスについて
体内水分のIN/OUTバランスは,水の摂取量と排泄量が同じ(ゼロバランス)であることで保たれています。
つまり,そのバランスを保つために必要となる最小水分量は,その1日の排泄量を下回らない量ということになりますね。
ただし,体内には細胞がエネルギー代謝などを行う際に生じる代謝水(体重当たり5mL)があるので,その分を差し引かなければならないのが注意点です。
したがって,1日の必要水分量を式で表すと,
①尿量 + ②便(100〜200ml) + ③不感蒸泄 - 代謝水=必要な水分量
によって求めることができます。
※不感蒸泄は,肺や皮膚から排泄される水分(肺からの呼気に含まれる水蒸気量が約400mL,皮膚から無意識に排泄される(運動時の汗とは異なる)水分量が約500mL。
成人の場合は15 mL×体重kgで求められます。
※1日の尿量はだいたい健康成人で1500ml,高齢者で1200ml程度とのことです。
簡易的な計算はこんな感じで出来ます!
【1日に必要な飲水量:簡易計算】
必要水分量=実測体重(Kg) × 年齢別必要水分量(ml/kg/日)※
※22〜54歳の場合:35ml/kg/日
※55〜64歳の場合:30ml/kg/日
※65歳以上の場合 :25ml/kg/日
飲水以外にも,食事からも水分を摂取できます。
その計算はこんな感じ!
【食事の水分量:簡易計算】
食事摂取(Kcal)×0.4=食事に含まれる水分量
実際に計算してみましょう!
例)84歳,女性,体重45kg,尿量:1300ml,便:1回(普通便),食事(1600kcal)90%摂取。
①尿量 + ②便(100〜200ml) + ③不感蒸泄 - ④代謝水=必要な水分量
この式に当てはめてみましょう!
①約1300ml
②約100~200ml
③約15ml×45kg=675ml
④約5ml×45kg=225ml
⇒式に当てはめると...1300+100~200+675-225=1850~1950ml
これで必要な水分量が求められました!
1850~1950 - 食事に含まれる水分量 = 一日に必要な飲水量
1850~1950 - 1600kcal×0.9(90%)×0.4 = 一日に必要な飲水量
1850~1950 - 576 = 1274~1374ml/日
他にも簡易計算してみると...
必要水分量=実測体重(Kg) × 年齢別必要水分量(ml/kg/日)
45kg × 25ml/kg/日 = 1125ml
以上のことからこの患者さんの一日に必要な飲水量は
だいたい 1125~1374ml 位になります!
まとめ
年齢を重ねると,だんだんと喉の渇きを感じにくくなったり,トイレが近くなるからと飲水量が少ない患者さんがたくさんいます。
飲水量の計算は簡易的なものでも概ね必要な量は求められそうなのでぜひ計算してみてください!
リハビリをするとどうなるの?? 整形外科編(高齢者の4大骨折の一つである大腿骨頸部・転子部骨折の治療エビデンス)
#大腿骨頸部・転子部骨折 #理学療法 #リハビリ #医療
お疲れ様です!フカヒレです!
今日はどうなるの??シリーズ第一段...
「リハビリをするとどうなるの??」
僕ら理学療法士が介入するメリットをお話しできたらなーと(笑)
今回は高齢者の骨折で多い大腿骨頸部・転子部の骨折について。
先に結論を言うと,
高齢者が骨折すると,適切な手術を行い,適切な後療法を行っても,すべての症例が受傷前の日常活動レベルに復帰できるわけではない。
しかし,エビデンス的に大腿骨頸部骨折・転子部骨折の決まったリハビリ治療は確立されていない。
なので,理学療法士などによる個別の評価・治療が必要。
あとは,退院しても6カ月は運動頑張りましょう!
って感じです。
細かいことは記事を読んでください👍
はじめに(エビデンスレベル・推奨Grade)
この後の内容でガイドラインを用いている場合は,エビデンスレベルと推奨Gradeについて記載しているので以下の表を参考にしてください。
エビデンスレベル 1)
整形外科のリハビリ
高齢者の4大骨折(①脊椎圧迫骨折②大腿骨頸部骨折③上腕骨近位部骨折④橈骨遠位端骨折)の一つである,大腿骨頸部骨折,転子部骨折について。
若い人でも骨折後に安静にしていると,体力や筋力が落ちますよね。それが高齢者となるとほんとに動けなくなり,寝たきりになってしまいます。「痛いから今は動かないでいいや💦安静にしていよう」と思う方もいますが,痛みが取れた時に動こうとしてもうまく動けないのです。
そのために,今では術後すぐにリハビリが始まります。
じゃあ手術後のリハビリは何が有効なの?
ガイドライン1)では
患者に対しては,術前から上肢機能訓練や健側下肢機能訓練,また患肢足関節機能訓練を行うことが有用であり,呼吸理学療法,口腔内ケアも行うことが望ましい。
術後は翌日から座位をとらせ,早期から起立・歩行を目指して下肢筋力強化訓練および可動域訓練を開始する。
歩行訓練は平行棒,歩行器,松葉杖,T字杖歩行と進めることが多い。特別なリハビリテーションメニュー(患者教育,強力な筋力訓練,歩行指導,作業療法,電気筋刺激など)が試みられ,それぞれの報告では一部のアウトカムにおいて有効性が認められている。
しかしsystematic reviewではその研究デザインやアウトカム設定に問題があると指摘され,エビデンスとしては一定の結論に至っていないので,確立したリハビリテーションメニューはない。
最近ではmultidisciplinary rehabilitation(集学的リハビリテーション,多角的リハビリテーション)の早期からの導入が施行されている。有効性は限られているものの,軽度・中等度認知症を有する患者に対しては有効との報告がある。
※multidisciplinary rehabilitationとは
各専門職種の協力の下に行うリハビリテーションであり,その内容としては,整形外科医,老年科医,理学療法士,作業療法士,看護師,栄養士,社会福祉士などのチームによって術後から退院後までのプランニングと訓練の実施を行うもの.
①リハビリテーション内容(運動療法)についてのCochrane reviewでは,通常と異なるリハビリテーションが術後成績に有効であるというエビデンスは高くない.
(Handoll HH, Sherrington C:Mobilisation strategies after hip fracture surgery in adults. Cochrane Database Syst Rev 2007:CD001704, EV level I-2)
⇒英文の結論としては,術後早期または術後のリハビリ期間中に開始する様々な動員戦略の有効性を決定するための無作為化試験からの証拠は不十分である。主に可動性を高めることを目的とした介入を追加的に提供することで得られる可能性のある利益を確立するために、さらなる研究が必要である。
これがいいという声もあれば,効果がないとの声があったり,研究として不十分であったりなど決まった治療はなく,患者さんに対して個別に評価した内容に対しての治療を提供する必要があると考えられますね。セラピストが問題点の抽出をできなければ,改善に時間を要してしまいますね。
②平均73歳の100例の患者に,理学療法1日1回の対照群と2回の介入群の比較を行ったところ,術後9週での回復状況に差はなかった.股関節外転筋力に差はなかった.入院期間に差はなかった.死亡率に差はなかった.
(Karumo I:Recovery and rehabilitation of elderly subjects with femoral neck fractures. Ann Chir Gynaecol 1977;66:170-176, EV level II-1)
⇒集中的にたくさんリハビリをしたから早く良くなるというわけではなさそうですね...
患者さんの精神的・身体的・経済的な負担を考えると,不必要な介入は控えましょう。ただ,すべての患者さんに当てはまるわけではなく,患者さんの希望や必要性がある場合には,積極的に行うべきだと思います。自分も認知機能の低下した方や易疲労性の方,合併症の有無などによっては目的をはっきりとして1日2回の介入を行ったりしています。
③術後理学療法の効果についてのsystematic reviewでは,最も高いエビデンスレベルとして軽度・中等度認知症を有する患者に対してはmultidisciplinary rehabilitationが有効との報告がある.
(Toussant EM, Kohia M:A critical review of literature regarding the effectiveness of physical therapy management of hip fracture in elderly persons. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2005;60:1285-1291, EV level I-2)
⇒これはなんとなくわかりますね。
今や90歳,100歳でも手術して次の日からリハビリをする時代で,当然認知機能の低下やせん妄は治療を阻害する因子になります。拒否もあれば,理解が難しかったり...ご飯を食べなかったり,痛みで内服を調整したり,せん妄で昼夜逆転したりなどうまくいかないことだらけです。そのため,multidisciplinary rehabilitationのようにカンファレンスなどで適宜患者さんの状態を専門職に相談しながら介入しなければ以前と同様の生活に復帰することはなかなか難しいです。
介入初期から介護保険の申請や必要になりそうなサービスを予測してくこともセラピストに必要になってくると思うので,ゴール設定の段階でイメージできるようにしましょう。
以上のような感じで,必ずこのリハビリをしなさい!というのはないみたいです。
リハビリの期間は?
ガイドライン1)的には
【Grade B】
術後最低6ヵ月程度は,リハビリテーションを行うべきである.
術後最低6ヵ月程度は,リハビリテーション介入による機能回復が期待できるとする中等度レベルのエビデンスがある.(EV level II-1, EV level III-2).
とのことで,結構長いです。
ずっと入院をしてリハビリをやるわけではなく,退院後も運動を続けた方がいいということです。うちの病院では,平均1~2カ月ほどで退院していく方が多く,運動の継続を目的に自主練習の指導や外来・訪問リハビリの導入も提案しています。現場の声としては,「日常生活はなんとかできるけど,前のようには歩けない」との声がやはり多いですね。そういった観点からも6カ月程度は運動を行った方がいいことを説明したりできると患者さんも長い目でイメージできるのではないかと思います。
予後は?
歩行能力の回復に関してガイドライン1)では,
受傷後,適切な手術を行い,適切な後療法を行っても,すべての症例が受傷前の日常活動レベルに復帰できるわけではない。歩行能力回復には受傷前の歩行能力と年齢が大きく影響する。術前の生活が自立していたものは自宅への退院が可能なものが多く,年齢が高いと歩行能力が落ちるものが多い。その他,骨折型(不安定型が不良),筋力,認知症が機能予後に影響する。
死亡率の関してガイドライン1)では,
1年以内の死亡率はわが国では10%前後,海外では10〜30%と報告されている。
生命予後に影響する因子には性(男性のほうが不良),年齢(高齢者ほど不良),受傷前の歩行能力(低い者ほど不良),認知症(有するほうが不良)などがある。
治療法別には人工骨頭置換術のほうが,骨接合術より死亡率が高い。セメント使用,非使用間での死亡率には有意差がない。
以上のことから,体力や筋力の低下や認知機能の低下した高齢者ほどリハビリが大切になってきます。
まとめ
大腿骨頸部・転子部骨折の患者さんがリハビリをするとどうなるのか?
⇒みんながみんな骨折する前のように戻れるとは限らないが,決まった治療はない。だから,理学療法士などのセラピストによる個別の評価,個別の治療が大切になる。理学療法士などの介入により,歩行能力の回復や死亡率の減少が望める可能性がある。
【参考・引用文献,サイト】
1)厚生労働省委託事業 公益財団法人日本医療機能評価機構:(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版) | Mindsガイドラインライブラリ (jcqhc.or.jp)
患者さんがご飯食べない...どうしてなのか?
#食欲不振 #理学療法 #リハビリ #医療
お疲れ様です!フカヒレです!
今日は食欲不振、いわゆるご飯が食べられない原因についてです。
入院した患者さんがよく食欲不振になることありませんか?
僕らも夏バテや熱が出た時は「今日は食べたくないな」って感じるときありますよね。
近年リハ栄養などリハビリをする時の栄養状態の大切さが言われていますが、まずは原因がわからないことには対処も難しいと思うので勉強していきましょう。
↓今回は若林先生の著書を参考にしてます!患者さんの栄養状態を改善したいなら絶対に見ておくべきです。
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食欲不振の原因
そもそもなぜ食欲不振になるのか?
若林らの著書「攻めの栄養療法」実践マニュアル1)によると,
原因 |
具体的内容 |
疾患によるもの |
がん,心不全,慢性腎臓病,脳血管疾患,肝硬変,呼吸器疾患,慢性胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃食道逆流,甲状腺機能低下症,電解質異常,口腔内疾患,うつ病,認知症,神経性食思不振症 |
(疾患に合併する症状) 悪液質や呼吸苦などに起因する倦怠感,疼痛,意欲低下など精神的な落ち込み,めまい,嘔気・嘔吐症状 |
|
疾患によらないもの |
加齢,ストレス,生活リズム(活動量不足,睡眠不足),発熱,便秘,味付け,嗜好,食事内容,食形態,威嚇の低下,咀嚼嚥下能力の低下,義歯の不適合 |
疾患と間接的に関連するもの |
尿失禁,便失禁,安静度指示,便秘,腹部膨満感 |
薬剤性 |
たくさんありますね...
疾患によるものに関しては,臓器の機能低下や慢性炎症などによる全身性の消耗・栄養利用代謝障害が生じることが関係してそうですね。
文献的には食欲や摂食行動を制御する神経機構は明らかになりつつあるが 2),炎症に伴う食欲不振の神経メカニズムには不明な点が多いとのことです。
でもそれだけでも倦怠感を感じるでしょうし。さらに疾患によっては呼吸苦や疼痛で食事を摂取する余裕が出ませんよね...
難しいのはせん妄や認知機能の低下した患者さんでしょうか...
注意がそれたり,食べ物としての認識が出来なかったり,昼夜逆転で食事の時間眠ってしまったり。日々の観察や機能評価を行い,適切な対応をしないことには,なかなか改善が難しい印象です。
疾患によらないものに関しては,急な入院や疾患による症状や不安ですごくストレスが溜まりますよね。そんな中で医療者側からのいろいろな話がありますし。元気な時は食欲出ますが,嫌なことがあった時は食欲出ないですよね。
また,安静度によって活動量が落ちればお腹も空かないですし,動かないことで夜眠られず寝不足になれば,食事より寝たいってなりますし。
病院のご飯も塩分や糖分控えてね~ってなるとおいしくないんですよ(笑)
おいしくないもの食べるの大変ですよね。それが毎日来るとなると嫌にもなります。
疾患と間接的に関連するものに関しては,下痢や便秘があると自分で食事量調整しますよね。下痢の時にたくさん食べる人は少ないと思いますし,便秘だと苦しくなりますよね。
骨折後に手術まで時間がある場合など,安静度によってはベッドから動けないのでどうしてもおむつ対応になることもあります。したら排便したくないからなるべく食べないようにしますよね。
薬剤性に関しては,あまり詳しくないですが副作用として食欲が低下する可能性があるもみたいです。
食欲不振への対応
・苦痛や倦怠感などによる症状が原因の場合
リハビリとして関われることは限られているので,まずは主治医,看護師,薬剤師,栄養士など多職種で相談し,身体的な苦痛や負担を取り除くことが第一だと思います。
例えば,疼痛が原因ならば薬剤調整,体位調整,食形態や食事内容の変更等を患者さんも交えて話し合うことが効果的だと思います。
また,易疲労性であったり倦怠感が強い場合には,リハビリの介入時間や負荷量などを患者さんと相談しましょう。リハビリ⇒食事が続くと疲れが残ってしまいます。
・疾患によらないもの(ストレスなど)が原因の場合
第一にすることは患者さんと話をして悩みや食べられない原因を探ることです。話を聞かないことには相手も話を聞いてくれませんからね。傾聴した上で,原因を解決できるような介入を行い,その後に食事の必要性を説明すると理解も得られやすいと思います。
嗜好や元々の食生活の聴取をすることで,入院中の食事内容の変更や栄養補助食品の提供,退院後の栄養指導にも繋げることができますので,時間のある時に聴取しましょう。自分は初期評価時に必ず細かく聴取し,カルテに記載するようにしています。
【朝:パン 昼:パンor麺類 夜:ご飯】みたいな人もいますよね。でも入院中のご飯は基本米飯です。患者さんは変更できることを知らないので我慢して食べられますが,主食を変更するだけで食が進むことも多いです。
・認知機能の低下が原因の場合
認知機能の低下も様々だと思うので,対応は個別で変わると思います。注意がそれる場合には,なるべく注意のそれるものを減らすためにカーテンで仕切り,テレビを消し,食べ物に意識をむくようにしましょう。
場合によっては集団何人かで集まって会話をしながら食事をする方が進む場合もあるので,試しながら一番いい方法を模索していくといいと思います。
時間がかかる場合もありますが,気分が乗らないときは時間をずらしたり,本人のペースに合わせて声かけをしながら適宜促していくことも重要なことだと思います。
・その他の原因の場合
薬剤性の場合の判断は難しいかもしれませんが,新しい薬剤が始まったタイミングなどに食欲不振が出現した際には,他の要因を削除して主治医や薬剤師,看護師に相談してみるといいと思います。
注意点としては,一度にいろいろなことをまとめて変更すると何が良かったのかわからないので,一つ一つ評価してみるといいと思います。
まとめ
こんな感じで,患者さんにとっては入院するだけで食事が食べれなく理由がたくさんあります。このこと考えずに闇雲に「ご飯食べないとだめだよ!」などは言わないようにしましょう。必ず食べられない理由があるのですから。
現在の全身状態を考え,患者さんと話しましょう。「あれなら食べれそう」,「痛くて食べれない」など理由を聞くことで,対応策も変わってきます。
リハビリって他の職種よりも患者さんと話す時間が多いと思います。なので,聴取したことをチームに還元していくことはしやすいんじゃないかなって感じます。患者さんが悩みを話しやすいセラピストになれるようにコミュ力を磨きましょう(笑)
【参考・引用文献】
1)若林秀隆,前田圭介,西岡心大:「攻めの栄養療法」実践マニュアル-うまくいく栄養改善と生活機能改善-,中外医学社,2020,p82-83.
2) Zeltser LM:Feeding circuit development and early-life influences on future feeding behaviour.Nat Rev Neurosci. 2018;19:302-316.
心不全とチェーンストークス呼吸...見つけた時にはどんなことを考えたらいい?
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お疲れ様です!フカヒレです!
今日は普段の疑問ですね。
休み明けみたら心不全悪化してる😨
なんてことありますよね...
訪室したらチェーンストークス呼吸だし。
でも細かい機序を学生や後輩に説明できないなってことで葛西らの総説論文1)を参考・引用してまとめてみます。
チェーンストークス呼吸とは?
教科書などを見ると,無呼吸期を伴う周期性呼吸で,数秒~数十秒の無呼吸→深く早い呼吸→浅くゆっくりした呼吸が繰り返される...と書いてますよね。
止まったなって思ったら,急にはーはーして,また止まっていくので比較的わかりやすい呼吸ですね。
心不全とチェーンストークス呼吸
次は心不全との関連です。
心不全では睡眠時無呼吸症候群とは異なるパターンの一回換気量の漸増漸減する過呼吸と中枢性無呼吸を繰り返し中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea:CSR-CSA)といわれています。
Javaheriらは左室駆出率(LVEF)45%未満の心不全患者の40%に合併する2)と報告しています。他の研究でも合併率は30~50%3)と報告しており,比較的高い頻度でみられるみたいですね。
また,CSR-CSAの合併のある患者とない患者を比べると,死亡率に有意な差がある4)ことが報告されています。
よく言われる閉塞性睡眠時無呼吸症との大きな違いは無呼吸時に中枢の呼吸刺激自体がないため胸壁,腹壁の運動が欠如し,気道閉塞がないのでいびきも著明ではないのが特徴みたいですね。
CSR-CSAの機序
一つの機序によるものではなく,いくつかの原因が合わさって起こるのでは?とされているみたいです。
詳細は明らかになっていないところもあり,あくまでも説とした図は以下の通りです。
流れ的にはこんな感じです。
CSR-CSAを合併する心不全患者では,合併していない群と比べるとPaCO2が低値である5)との報告があります。
PaCO2が低下するということは,過換気などによりO2が過剰になり,CO2が排出されている状態のため,呼吸が抑制されますね。PaCO2がもともと低めということは,そもそも無呼吸になりやすい状態。
そのため,CSR-CSAを合併している患者さんでは合併していない患者さんよりも無呼吸閾値を下回りやすく,それにより換気が抑制され無呼吸が出現します。
また,心不全患者では低心拍出量により肺から化学受容体への動脈血ガス分圧の変化を伝達するのに時間がかかるため,化学受容体でPaCO2の低下を感知したときには,すでにPaCO2は無呼吸閾値を下回っていることになります。
睡眠中の意識状態の変化でも変わってくるため,様々な要因が絡み合ってCSR-CSAとなっていると考えられているみたいですね。
心機能への影響は?
心不全患者に合併するCSR-CSAは中枢性無呼吸のイベントの回数と比較して,ほかの悪化因子と独立した死亡率,心臓移植率の増加因子であることも報告されている4)みたいです。
また,CSR-CSAを合併する心不全患者では,交感神経活動性の亢進を伴い6),実際に交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質である血中ノルエピネフリン濃度が覚醒回数や無呼吸に伴う低酸素血症の程度に比例するという報告もされている7)。このような長期間持続するカテコラミン過剰状態,反復する低酸素血症,HR,BPの上昇などは心機能,心収縮力の低下を招くことや不整脈の惹起8)に繋がり,死亡率などの予後の悪化につながる可能性があるとのことです。
まとめ
左室駆出率(LVEF)45%未満の心不全患者の40%に合併すると言われており,臨床でも比較的見かけることが多いCSR-CEA。
様々な要因が機序として考えられるため,胸水の量や検査データなどから全身状態を考える必要がありますね。
予後の悪化にも繋がる可能性があり,見かけた際にはチームでの情報共有や適切な治療,NPPVの導入を提案できると患者さんの状態改善に繋がると思います。
ではまた👋
【参考・引用文献】
1)葛西隆敏,成井浩司:慢性心不全に伴う中枢性睡眠時無呼吸を伴うチェーンストークス呼吸,日本呼吸管理学会誌 第12巻 第3号,412~418,2003.
2)Javaheri.S.et al:Sleep apnea in 81 ambulatory male patients with stable heart failure.Types and their prevalences,consequences,and presentation,Circulation,97:2154~2159.1998.
3)Sin.D.D.,et al.:Risk factors for central and obstructive sleep apnea in 450 men and women with congestive heart failure,Am J Respir Crit Care Med,160:1101~1106,1999.
4)Hanly.P.J.,et al.:Increased mortality associated with Cheyne-Stkes respiration in patients with congestive heart failure,Am J Respir Crit Care Met,153:272~276,1996.
5)Naughton,M.,et al.:Role of Hyperventilation in the patho-genesis of central sleep apnea in patients with congestive hear hailure,Am Rev Respir Dis,148:330~338,1993.
6)van de Borne,P.,et al:Effect of Cheyne-Stokes respiration on muscle sympathetic nerve activity in severe congestive heart failure secondary to ischemic or idiopathic dilated car-diomyopathy,Am J cardiol,81:432~436,1998
7)Naughton,M.t.,et al:Effects of nasal CPAP on sympathertic activity in patients with heart failure and centrl sleep apnea,Am J Respir Crit Care Med,1995;152:473~479.
8)Javaheri,S.,et al:Association of low PaCO2 with central sleep apnea and ventricular arrhythmias in ambulatory patients with stable heart failure,Ann Intern Med,128:204~207,1998.